ワキは、暑さや運動による体温上昇からもたらされる温熱性発汗と、精神的な緊張やストレスからもたらされる精神性発汗の両方が生じる部位です。温熱性発汗や精神性発汗は、だれにでも起こることで、それだけでは病気とはいえません。しかし、日常生活や仕事に支障をきたしているようであれば「腋窩多汗症(えきかたかんしょう)」という病気かもしれません。一人で悩まずに、まずは医師に相談してみるとよいでしょう。
よくある訴えは以下のようなものです。
やはり、汗が多量に出ることによる、衣服への影響を気にされていることが多いようです。とくに女性では、衣服を頻繁に着替える必要があったり、着る服が限られたりするということが一番大きな悩みになっているようです。
これまでに治療を受けられた患者さんからは、下記のような訴えがありました。
このように、着ている服の汗ジミや他人の目を気にする悩みが多いようです。また、個人差はあるものの、暑い夏だけでなく、すべての季節で汗に悩んでいる患者さんが受診されています。
多汗症は、感染症や内分泌疾患、脊髄損傷などの病気や、使用しているお薬などが原因で生じることもありますが、ほとんどの場合は明らかな原因がありません。原因となる病気がある場合は、そちらを先に治療する必要があります。
これまでの報告から、明らかな原因が存在しない多汗症(「原発性(げんぱつせい)多汗症」といいます)の症状は遺伝することがあると考えられており、当院の調査でも、治療を受けた患者さんのうち約7割に、家族に同じような症状をもつ人がいらっしゃいました。
大嶋雄一郎ほか: 西日本皮膚科, 76 (3): 248-253, 2014
ワキガは医学的に「腋臭症(えきしゅうしょう)」と呼ばれるもので、ワキの多汗症とは基本的に異なります。ワキの下にはエクリン腺とアポクリン腺と呼ばれる二種類の汗腺があり、多汗症に関係するのはエクリン腺で、ワキガに関係するのはアポクリン腺ですので、別の病気であり、治療法も異なります。ただし、ワキの多汗症とワキガが合併することもしばしばみられます。